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壊れてしまったら、ちがう景色を楽しめばいい

DIARY2023.10.13

こわれてしまって修復不可能な人間関係はあっても
こわれてしまった器は修復可能って言うじゃない?ということで
前から興味があった 『金継ぎ』という技法を学びにいっておりましたの。

月に一度 全8回、約2時間程度
上田市にある アンティーク家具・古道具と家具修理のお店 キビクラフトにて。
(じぶんが参加したのは 2022年です  てへぺろ)

おしえて下さるのは 安曇野市にある 工房 茶虎 の大曽根先生。名前からして こんな巨匠のイメージでしたが 
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スラッとしたいまどきのナウでヤングな先生でした、失礼しました。

こんな風に割れてしまった 器たち
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様々な道具を使って
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まずは 割れ、欠けの前処理。やすりで器の割れた面の角や釉薬が残っている部分を削り、漆の線が描けるようにします。
金が載っていくので 慎重に、ていねいに削ります。

そして 割れた破片を 、小麦粉に水、生漆を加えて ヘラでよくまぜた 接着剤の役割を果たす『麦漆』で接着していきます。
漆が黒くなり、接着力がでてきたら、接合します。
そしてしばらく 温度と湿度を保った 室(むろ)に入れて乾かします。今回は衣装ケースを利用しておりました。

途中で気が付いたのですが、漆はかぶれる可能性があるので、ゴム手袋を着用、そして 作業の間はスマホがいじれず、 写真がとれません、、、

よって この写真はおそらく 室で乾かして 割れた破片同士が 無事
 クッツイタヨー という写真ではないかと思われます。

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その後は
くっついた部分の隙間や欠けの箇所に 錆漆(さびうるし)をつけたり、乾かしたり、乾いた錆をやすったり、削ったり、砥石でといでみたり、彫刻刀で削ってみたり、、、地道な作業がしばらく続きます。

そしていよいよ 終盤になり  接合部分に 黒漆 を塗ります。
この 黒漆 を塗った箇所に 金を蒔いていくので 慎重に作業します。
そしてまたそのうえに え漆を塗り、最後にやっとこさ 金の粉をまきます。

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金を蒔かずに 漆だけで仕上げるやり方もあります(写真 左)

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最後に 希釈した生漆を筆で金粉の上をなぞり、拭きとり、漆のはみ出た箇所を彫刻刀で削り、線をきれいに見せます。
そして 棒に据えた鯛の牙!(実際に尾頭付きの鯛 それもけっこう大き目サイズなやつ を 煮つけにし、その牙を使用、、、どんだけ~)

完成でやんす
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やんごとなき見事な器に生まれ変わりました、いい景色、です。
ってか もったいなくて使えない、、、ひー。

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他の生徒さんたちの器たち
割れた器のサイズが大きければおおきいほど、労力と使う材料が多いことをみんな実感。。。

金継ぎは『金繕い』とも呼ばれ その歴史には 諸説あるようですが、 安土桃山時代から江戸時代 『茶の湯』の時代に今のような金継ぎの技術が誕生したそうです。
割れてしまった器の 金継ぎした箇所を『景色(けしき)』と呼び、割れや欠けのマイナスに思われる箇所に美を見出し、傷をなかったことにするのではなく、傷もその器の歴史と考えて新しい命を吹き込む、そういう考えのもとに行われている日本独自の技術だそうです。
縄文時代の遺跡からも 実際に漆で修復した跡のある土器が発掘されているそうで、壊れたら修復する、日本人の『もったいない』精神は古代からあったんですね、、、、

合成樹脂を使って簡易的に修理する方法もあるようですが、実際に食事で手や口が触れる器の場合は 漆や麦などの天然素材を使用して修復する、伝統的な方法のほうが安心、という考え方もあります。
まあ、時間や手間、コストがかかったり、修復した器は電子レンジで使用できない、というデメリットもありますが、思い入れのある器、お気に入りの器をもし割ってしまっても、元通りではなく 修復してまた新しい景色に生まれ変わらせることができるんで、あたし、という 安心感を手に入れられたような気がいたします。
おとなじゃーん!ひゅーひゅーだよ!!

現場からは 以上です。